サイオステクノロジーのエンタープライズアプリケーション部 アプリケーションソフトグループグループマネージャーの松尾博司氏は「プロジェクト管理を行うには、プロジェクトに関する情報をすべてデータとして入力していくことが必須となる。しかし、多くの企業では、現場にそうした文化が根付いていないため、データ入力の時点でつまずき、そこから先に進めていない」とその現状を指摘する。
どうすれば、プロジェクト管理ツールを現場で活用してもらえるのだろうか?
今回は、サイオステクノロジーのプロジェクト管理ソフトウェア「ProjectKeeper Professional」(以下、ProjectKeeper)を紹介する。松尾氏は「データ入力という最初のハードルを引き下げることで、これからプロジェクト管理ツールを導入する企業でも手軽に活用できるツールを目指した」とその製品コンセプトを説明する。同社のアプローチは「プロジェクト管理の入口を広げて、プロジェクトに関する各種情報をデータ入力して集約し、現状を可視化できるツールを提供しよう」というものだ。
●“情報の集約”と“事実の可視化”を実現するPMツール
サイオステクノロジーは、オープンソースソフトウェア(OSS)製品群「SIOS Applicationsシリーズ」の1つとして、ProjectKeeperを2008年2月から販売している。
ProjectKeeperは、同社自身が受託システム開発を行う中で蓄積してきたプロジェクト管理のノウハウを生かして開発したソフトウェアだ。プロジェクトの工程やスケジュール、要員、進ちょくなどの管理やその集計結果の帳票出力など、プロジェクト管理に必要な基本機能を搭載している。また、Webブラウザの管理画面では、コスト管理やメンバー間のコミュニケーションなどの機能も活用できる。
ProjectKeeperの特徴は「プロジェクト管理における“情報集約”と“データの可視化”を追求しながら、現場の使いやすさや導入の容易さにもこだわっている」点にある。
プロジェクト情報の集約
ProjectKeeperではプロジェクト管理に関連するあらゆる情報を一元管理する機能を提供している。
●主な管理項目
・プロジェクト工程
・スケジュール、その進ちょく率
・プロジェクトメンバーのアサイン状況
・プロジェクトの工数、コストの計画と実績
・発生した課題とその解決プロセスの情報
・各種成果物
現場のメンバーは、Web上の「実績入力」画面から、日々の進ちょくや工数などを登録。入力された各種情報を、ナレッジベースとして活用することができる。
一方、プロジェクトマネジャーは、複数プロジェクトの状況を「プロジェクト計画」画面上から一覧でき、新規計画作成時にはメンバーのアサイン状況を視覚的に確認しながら要員を割り当てることが可能だ。また、プロジェクトのタイプごとに、工程とそれぞれに必要な工数、原価などの情報を「プロセスパターン」として登録しておき、新規プロジェクトを作成する際にテンプレートとして再利用することもできる。これにより、プロセスの標準化や業種への対応、案件受注時における見積もり作成の精度向上などに役立てることができる。
データの可視化
データの可視化を実現する機能としては、すべてのデータを自由な条件で抽出して一覧表やグラフを作成できる「BI(ビジネスインテリジェンス)」機能を利用する。BI機能で作成したグラフや一覧表は、ログイン直後の「ダッシュボード」画面にまとめて表示させることができる。これによりプロジェクトマネジャーは、プロジェクトの状況をあらゆる角度から定量的に把握し、問題を早期に発見して的確に対処することが可能だ。
また、プロジェクトの分析機能も充実しており、原価予算実績分析とEVM(Earned Value Management)分析に対応する。原価予算実績分析では、労務費や経費、材料費といったコストの予算と実績を月別に対比し、直感的に分かりやすいグラフ、詳細を確認できる一覧表などによって、その損益状況を常にチェックできる。一方のEVM分析では、特別な入力作業をすることなくスケジュールとコストの両面からの分析データを簡単に出力できる。完了予定日や最終損益の予測も可能なため、リアルタイムに計画と実績のズレをモニターし、リソースの再配置や計画の見直しを行うなど、早期段階での軌道修正を実現する。
●現場の運用を変えることなく段階的な導入を可能に
こうした機能面の特徴に加えて、ProjectKeeperで注目されるのが「現場のデータ入力の手間を軽減し、ツール導入を容易にする取り組み」である。
同社のマーケティング企画部マーケティンググループの工藤憲幸氏は「工事進行基準の適用によって、最も混乱しているのは現場だと実感している。例えば、工事進行基準では、統一された管理指針の下、従来よりも細かい進ちょく管理が求められる。しかし、いきなり分単位で進ちょく管理するようなシステムを導入してしまうと、現場に大きな負荷が掛かり、結局使われなくなってしまう」と指摘する。また、「導入したシステムに現場が縛られるのではなく、現場の運用レベルに合わせて段階的にシステムを構築・導入する方が、無理のないプロジェクト管理を実現できる」と語る。
そのためProjectKeeperは、現場の従来の運用プロセスを変えることなく、柔軟にシステム構築ができるように設計されている。現場のメンバーがデータ入力する項目を必要に応じてカスタマイズできるのはもちろん、機能的にもプロジェクト計画からスケジュール管理、ダッシュボード、各種分析まですべての機能を最初から導入する必要はない。企業ごとに最適化した機能を選択して「必要最小限のデータ入力作業でプロジェクト管理をスタートすることが可能」だという。
また現在、多くのプロジェクト管理に使われているMicrosoft Office Excelとの親和性も高く、BI機能を使った検索結果や集計データをExcelおよびCSVファイルとして出力する機能を装備している。「プロジェクト管理市場では“Excelからの切り替えが課題”といわれているが、無理して完全に切り替える必要はないと考えている。企業によっては、データの集約や管理、分析はツールを活用し、リポート作成ではExcelフォーマットを引き続き活用するというパターンでも、現場の運用に支障がなければ問題ない」(松尾氏)という。
さらに、ProjectKeeperではシンプルで分かりやすいメニューや直感的なアイコンを使用するとともに操作性にもこだわり、ユーザーの入力作業の負荷を軽減する工夫を施しているという。
●顧客企業のニーズに応じて柔軟なカスタマイズに対応
ProjectKeeperの販売価格は、同梱ソフトウェアのIBM WebSphereやDB2を含めて1プロセッサコアライセンス当たりで200万円。多くのプロジェクト管理ツールがユーザーライセンスを採用している中で、ProjectKeeperではサーバのプロセッサコアライセンスとして提供するため「ユーザー数に関係なく、メンバー全員での導入を安価に実現できる」点も導入メリットの1つだと同社は説明する。
また、自社では導入が難しい企業に向けて、各種プロフェッショナルサービス、トレーニング、コンサルティングメニューも有償で用意しており、顧客のニーズに合わせた「ProjectKeeper Professional」の導入をサポートする。これまでに10社への導入実績がある。
●導入事例ハイライト
Lee.ネットソリューションズ
Lee.ネットソリューションズはProjectKeeperによって、技術部門でのスケジュール管理と原価管理を実現した。特に、社内の経費処理も1つのプロジェクトとして登録し、プロジェクトの予実管理の画面で交通費などの経費を入力する運用を製品版の機能を使用して開始した。出力するリポートのみBI機能を使用して作成。また、顧客自らBI機能を活用し、リポーティングの作成も行っている。これまで集計や可視化に時間がかかっていた販売管理費を的確に把握できるようになった。
ラック
ラックでは、案件管理の効率化を目的としてProjectKeeperを導入。案件の進ちょく状況や稼働率、損益を常に把握することで、経営層やマネジャーの迅速な意志決定が可能となった。また、プロジェクト管理に必要な基本情報を売上管理システムから出力されるCSVファイルからバッチ処理にて取り込み、EVM分析機能を活用した進ちょく管理を行うなど、他システムとの簡易的なデータ連携を実現している。
●現場での活用をさらに促進、将来のサービス化も視野に
サイオステクノロジーは2009年1月、「ProjectKeeper Professional」の簡易版として、プロジェクトの進ちょく管理と情報共有に機能を絞った「ProjectKeeper Lite」をラインアップに追加し、より簡単にプロジェクト管理に活用できるツールとしての提案を行っている。
今後の機能強化の方向性についてアプリケーション開発部 製品開発グループ プロジェクトマネージャーの大井 純氏は、「ユーザーからの要望を取り入れながら、現場の進ちょく入力をより活性化させるための機能拡充を図っていきたい」との考えを示した。
また、現在の製品では現場のメンバーが日々の進ちょく率を入力し、それを上長が承認する機能を提供している。この点について、大井氏は「これはあくまでも各メンバーのタスクをベースにした数値的な進ちょく報告だ。自分が担当しているタスクがプロジェクト全体にとって、“どんな成果を与え、どう評価されているのか”が実感できるようになれば、開発メンバーだけなく営業担当者にとっても、進ちょく入力へのモチベーションが上がるのではないか」と語る。
同社では、次期バージョンで現場の進ちょく報告に対して上長が評価コメントを残せる機能なども検討中だという。また将来的には、ASP(Application Service Provider)やSaaS(Software as a Service)、クラウドコンピューティングに対応したサービス化も視野に入れており、その布石として2009年11月にはProjectKeeperの仮想化ライセンスを提供開始している。
松尾氏は「既存のパッケージ製品の機能をそのままサービス化するのではインパクトがない。形態を変えて提供する際には、クラウド環境ならではの付加価値を付けることで、ユーザーにプロジェクト管理ツールの新たな選択肢を提案していきたい」と今後の展望を述べた。

